新卒から続けてきたコンサルティングファームでの仕事を今年の1月で辞め、2月から事業会社で働いているのですが、無事に試用期間が終わりそうです。上司たちとのフィードバック面談も好意的に終えていただけたので、試用期間をふりかえる意味で学びを記事にまとめておこうと思います。*1
- インハウスを経験しようか検討中の弁護士の方
- 法務部中心とした管理部門の方
- 管理部門とのやり取りが多い事業部門の方
辺りを想定読者にしながら書いてみます。
1.やってみてよかったこと
Twitterではまさに"つぶやき"として、日々の業務における学びや秘伝のタレを公開してくれる神の様なアカウントが複数存在します。また、私も参加している法務互助会では、投げ込まれるトピックに応じて日々有意義な議論がなされています。
チームで法務やってると、ふとした疑問を横の人に「これってさー」って聞いて、知見ある人に教えてもらったりするんですけど、一人法務だとそういうことできないのが辛いじゃないですか。
— Genichi Kataoka (@katax) March 6, 2019
だからここは、「これってさー」って気軽に聞ける場所にしたいなって思ってますhttps://t.co/cqNfK4WTfJ
これらの情報源から得た学びや、自分が前職時代に感じたことを踏まえて現在実践していることを「1.やってみてよかったこと」として書いてみます。
(1)即レス
これは現職の同僚で修習同期が、社内報のインタビューで「即レスの重要性」を語っていたことから取り入れたものです。
コンサル時代は毎週の定例会でのコミュニケーションが主で、日々問い合わせを受けるようなことは殆どありませんでした。一方現職では、日々大量の相談が届きます。そんな中では即座に対応することは不可能なのですが、どんなに忙しくても最低限…
相談ありがとうございます、今週中にお返事いたします。
のように感謝の言葉と大まかな期限感を伝えることにしています。チャットツールの普及した今日の業務環境では、即座に相手のリアクションが確認できないことは結構なストレスなんじゃないかなと思っています。
(2)名前を売る
これはクラウドサインの橋詰さんが昔から仰っていたことで、会社員だとしても名前を売って事業側から指名を受けるような立ち回りをすべきだという話です。
はい、直接ご指名を頂けてナンボだと思ってます。しばしば「上司が案件ごとに担当を割り振る」という方法がとられがちですが、現場の不満を生むだけで、正しい評価にもつながらないと思ってます。 https://t.co/fuwG9SyyUU
— 橋詰 卓司 (@takujihashizume) March 10, 2020
フリーランス経験がある橋詰さんらしい視点だと思いますが、実践してみるとまず何より自分のモチベーションに繋がって良いです。不思議な話ですが、「担当者様」と言って相談される時よりもやる気が出ます。
またこれは肌感覚に基づく推測ですが、「◯◯さん(個人名)」宛てに来る相談は、「担当者様」宛てにくる相談のタイミングよりもツーステップくらい早いのではないかという気がしています。
(3)現実的な代案を示す努力をする
これはよくTwitterで議論になっている(そしてたまに燃えている)、「否定するなら代案を示せ」についての自分なりの結論です。
・現実的な
まず、示す代案は事業視点に立って現実的なものである必要があると感じます。「それをやったらリスクは低減されるかもしれないけど、当初の目的全然達成できないだろ」みたいな代案は、代案を示さない場合よりも強い分断を招きかねないと感じています。
・努力をする
一方で、「黒を白にはできない」のはその通りだと思うのです。なので、問題点や代案を検討したプロセス、その結果としてやっぱり代案を示すのは難しいことを説明するようにしています。検討したプロセスまで示したのに満足していただけなかった経験は今の所無く、むしろ感謝されることが圧倒的に多いです。
(4)弁護士を名乗らない
前職までは対社外のコミュニケーションが主体であり、弁護士であることを表明することは信頼感につながりメリットが大きいと感じていました。
他方で対社内のコミュニケーションが主体の現職では、弁護士であることを表明するメリットがそんなに無いのではないかと感じています。不必要に権威性を帯びてしまうのは避けたいし、事業側にしてみれば「私が相談するかどうかと、お前が弁護士かどうかは関係ない」というのが本音なのではないかと思うのです。
対社内で信頼感を得るのであればわざわざ自分から弁護士を名乗るのでは無く、関係性が出来上がった後に「世古さんって弁護士だったんですね!」と事後的に認識してもらう方が効果が高い気がしています(完全に主観です)。
(5)日本語を大切にする
私は転職1ヶ月が経つか経たないかのうちに完全リモートワークに移行したので、結構苦労することが多かったです。その中でも一番の障害となったのが日本語の問題です。
「相対的に口頭でのコミュニケーションの方が得意な人」がリモートワークにより文章でのコミュニケーションを強いられると、かなりの頻度で主語や目的語が抜け落ちるのです。また新参者にとっては、非対面の状況における略語や社内用語の多用はかなり応えました(それってどういう意味です?と気軽に聞けない)。
以上を踏まえ、少なくとも自分が人に文章で話をする時には
- 主語や目的語を落とさない
- 悩んだら略語や専門用語は使わない
ことを意識しています。「お前のブログ、できてないぞ」とのご指摘お収めください。
(6)感謝を言葉にする
これは良い人アピールみたいな話では全然なく、コンサル時代におけるセキュリティ教育やインシデントレスポンス態勢構築での学びから来るものです。
法務でも同じだと思うのですが、 人は言いにくいことは極力言わないで良いように行動するものです。言いにくいことは言いやすい人に話したいし、言いやすい表現(曖昧な表現)で話しがちなものです。
聞いて嬉しい内容では無い場合の時こそ意識的に、相談してくれたことに対する感謝を表現するように意識しています。
(7)自分から挨拶する
これは主に新入りの心得的な話です。法務互助会で@chizatamagoさんに以下のようなアドバイスをいただいて実践し、とても役に立ちました。
やはり1番簡単なのは自分から挨拶することだと思います会社でもこれができてない人が多いです。
相手がどう反応するかは関係なくて、「自分は相手のことに関心があり、尊重してますよ」というサインなので、無料の資源としてどんどん使えばいいと思います飴配ってるのと一緒です。
このアドバイスは「自分から挨拶する」という点ももちろん重要なのですが、「相手がどう反応するかは関係なくて」という部分がより重要だと感じました。自分の場合、相手を尊重することに負担を感じることは滅多にないのですが、礼を持って接した時に礼を持って返されないと結構強く「…。」となってしまうんですよね。
このアドバイスをいただいたおかげで、挨拶したときに相手が「どうも」といって会話を切ってきたり、自己紹介を返してこなかったような場合でも(「あめちゃんどうぞ」と心の中で呟きながら)心穏やかに乗り切ることができました。
実際の所、上記のような場合でも相手は突然の自己紹介で面食らっていただけだったり、忙しすぎて素っ気なかっただけだったりするんですよね。後から誤解を解けたケースが多かったです。
2.自分の中でまだ答えが出ていないこと
1章が長くなってしまったので、こちらは後編で書くことにします。
(1)慣習の否定
(2)攻めの法務/守りの法務
(3)どこまで説明するか
みたいなトピックを考えていましたが、もうちょっといろいろ練ってみます。