プライバシーの学び方

最近かぜで体調をくずしてしまい、法務系 Advent Calendarをあまり追えていなかったのですが、今日見たワナビ先生の記事が個人情報保護法の学び方に関する記事でした。

こちらに影響を受け、今日はプライバシーの学び方を書いてみようと思います。

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1.プライバシーとのかかわり

受験生時代のプライバシーに対する認識を思い出すと、

  • 「宴のあと」「石に泳ぐ魚」事件
  • 要件暗記して、択一対策しておけばOK
  • Googleマップを下敷きにした憲法論文とかはあり得そう

くらいのものでした。その後仕事でセキュリテイをやるようになり、次第にプライバシーにふれる機会が増え、セキュリティとプライバシーの割合が同じくらいになって今に至るという感じです。

2.問題意識

自分の場合、個人情報保護法に関する議論を勉強していてもあまり面白味を感じられず、理解を上手く深められなかったな…というのが正直な所です。

そこで、

  • プライバシーについて学んでみたい
  • けれども、個人情報保護法を読んでもあまりピンとこない

という方向けに、私なりのおすすめの勉強方法を提案してみたいと思います。

3.原因

個人情報保護法を学び始めた当初、あまりピンとこなかった原因は何かというと

  • 「専門家」によっても言っていることが異なるように感じる
  • 結局何をしたい法律なのかよくわからない

といった所があったかなと思っています。お前の学が浅いせいだと言われると返す言葉もないのですが、立法における政治的対立・妥協も影響してたのかな…と今になると思います。

4.提案

そこで、以下に3つの「まわり道」を提案したいと思います。どれも自分がやってみた方法で、それなりに効果があったと感じているものを挙げています。

  • セキュリティから入る
  • 炎上案件から入る
  • 国外法から入る

(1)セキュリティから入る

何かの本で、「プライバシーの無いセキュリティはあり得るが、セキュリティの無いプライバシーはあり得ない」みたいな言葉を読んだことがあります。それくらいプライバシーにとってセキュリティは重要な要素です。

最近だとNISTがセキュリティとプライバシーの関係を図示してくれています。

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出典:NIST

プライバシーの本質がセキュリティ以外にあるといのは正しいと思うのですが、基礎知識や用語を理解する上でセキュリティから入るのは効率的なんじゃないかと思います。

難易度も程よいので、IPAの非専門家向けのセキュリティ資格である「情報セキュリティマネジメント試験」あたりの勉強から始めてみるのはいかがでしょうか。

また、個人的にはCTF(セキュリティのクイズ大会のようなもの)から入るのもモチベーションを維持する上でおすすめです。

(2)炎上案件から入る

今年も色々な企業が、プライバシーを契機として炎上しました。

炎上したということは、そこに何らかプライバシーの本質に関わる挑戦・問題があったということだと思います。こういう炎上案件を起点に、条文や議論を追いかけてみるのは理解を深める良い方法だと思います。

また、炎上した場合には企業側から謝罪に見せかけた反論が出ることも多いので、対立点を理解しやすいのも良いところです。

(3)国外法から入る

これは前2つに比べてややヘビーなのですが、個人的に一番効果があった方法かなと思います。ここでは代表例としてEU法と米国法を挙げてみたいと思います。

【EU法】

ヨーロッパはプライバシーを人権としてとらえ、厳格に適用していく姿勢が強いと考えています。制度的にも(他国に比べ)理論的に一貫しており、本来あるべき姿はどうなのかということを全体感をもって理解できるのではないかと思います。

GDPRで1冊本を挙げるとするならば、私は中崎先生の本をオススメします。

【米国法】

 最近はCCPAが話題ですが、米国のセキュリティ・プライバシー法は何もCCPAが全てではありません。金融・子供・医療・マーケティングといった各分野別に法律があり、政治的な対立を経て制定に至っています。州法ごとに微妙に違いもあったりして、(趣味でやっている分には)面白いと思います。米国法を学ぶと、分野別の重要要素や立法の背景を深く理解することができます。

米国のプライバシー法だと、iappのこの本をおすすめします。もし日本語で読みやすい良い本をご存知の方が居れば教えて下さい。

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 以上、自分の経験を踏まえたプライバシーの学び方の提案でした。他の先生方からも、自分の好きな分野の学び方についての話とか聞いてみたいですね。