改正電気通信事業法をめぐる実務対応の最前線 第3回

改正電気通信事業法の外部送信規律について、

  • 勤務先で自ら / 同僚と対応
  • クライアント先で検討

した結果得た、学びや悩みについてまとめていっています。

 

今回はプロジェクトを立ち上げて一番最初にぶつかるであろう、スコープについて。とはいえスコープの中核部分は個別性が強い部分だと思うので、共通的に悩みそうなスコープの外縁について書いていきます。

第1回:総論

第2回:EC・オンラインショッピング

第3回:スコープの外縁(今回)

1.海外子会社

(1)問題意識

自社の中核的な事業については、自身としてもそれなりに事業理解があったり、Webサイト・アプリケーションともに担当者がいたりして、心理的な負担感はそこまで高くないと思います。

一方で、海外子会社の事業におけるWebサイトやアプリケーションについては、

  • あれ、ひょっとしてこれも対象なんだっけ
  • 別に日本のユーザー向けではないけど、日本からもアクセスはできるしな
  • 現地の担当者と現地語で交渉するのちょっときついな…

と、不安に思った方もおられるのではないでしょうか。

(2)考え方

ア 背景

外国法人等への電気通信事業法の適用については、令和4年改正に先駆けて、令和2年に改正が行われています。正確にはこの法改正に伴う解釈変更により、外国法人等への適用関係が明確化されました(なので、法をいくら探してもこの点についての記述は出てきません。ご注意を)。

電気通信事業者の皆さんはまさに少し前、この辺を整理・対応した所だと思うのですが、第3号事業者として今回外部送信規律に対応される皆さんはご存知ないかも…と思い紹介します。

イ 基準

電気通信事業法の外国法人等への適用については、

  1. 外国法人等が、日本国内において電気通信役務を提供する電気通信事業を営む場合
  2. 外国から日本国内にある者に対して電気通信役務を提供する電気通信事業を営む場合

に適用されるとされています。GDPRやられている方なんかは「おっ」と思いますよね、そうですGDPR第3条の地理的適用範囲の条文にかなり似ています。

 

2に該当するか否かの考慮要素も、GDPRの地理的適用範囲とかなり似ていて

  • サービス提供の言語(サ ービスを日本語で提供していること)
  • 決済通貨(有料サービスの決済通貨に日本円が あること)
  • 国内向けの販売促進行為の有無(国内におけるサービスの利用について、広告や販売促進等の行為を行っていること)

なんかが挙げられています。

ウ 出所

この点については「外国法人等が電気通信事業を営む場合における電気通信事業法の適用に関する考え方」が出ているのですが、言葉を補ってくれている立案担当者解説の方が読みやすいかもしれません(こちら)。

2.プラットフォームの利用

(1)問題意識

のようなプラットフォーム企業のWebサイト内に、利用企業が個社ごとのWebページを持っていることがあると思います*1

この場合、「プラットフォーム企業側の対応に加えて、利用企業側で独自対応が必要か」はなかなか悩ましい問題です。*2

(2)考え方

ア 結論
  • 原則
    • 利用企業もいわば(to B)ユーザーであり、プラットフォーム企業のWebサイトの構成部分としてサービスを利用している範囲では独自対応は不要
  • 例外
    • サービス利用に際して、利用企業が独自にタグや情報収集モジュールを埋め込んでいる場合には、当該積み増し部分については独自対応が必要

というのが現在の私の立場です。

イ 理由(原則部分)

プラットフォーム企業のサービスを利用するに際しては、利用企業の管理部分は、プラットフォーム企業のサービスの構成要素であることがわかるような形で(=小ページであることがわかるような形で)利用されるのが一般的だと思います。

URLも、ホスト名やディレクトリ以下を企業名に設定できたりしますが、ドメインは基本的にプラットフォーム企業のものだと思います。

出所:https://ferret-plus.com/8736

そもそもプラットフォーム側でどのようなタグや情報収集モジュールを入れているかなんて利用企業側に連携される訳でもないですし、共通部分に埋め込まれているタグや情報収集モジュールについては、プラットフォーム企業側の提供サービスの一部として、プラットフォーム企業側で対応されるべきものだと考えます。

ウ 理由(例外部分)

一方で、利用企業の管理部分において、独自にタグや情報収集モジュールを埋め込んでいる場合には、その積み増し部分については利用企業こそが以下の条文でいう「情報送信指令通信」を行おうとする主体であり、独自に対応する必要があると考えています。

法第二十七条の十二(情報送信指令通信に係る通知等)

電気通信事業者又は第三号事業を営む者(内容、利用者の範囲及び利用状況を勘案して利用者の利益に及ぼす影響が少なくないものとして総務省令で定める電気通信役務を提供する者に限る。)は、その利用者に対し電気通信役務を提供する際に、当該利用者の電気通信設備を送信先とする情報送信指令通信(利用者の電気通信設備が有する情報送信機能(利用者の電気通信設備に記録された当該利用者に関する情報を当該利用者以外の者の電気通信設備に送信する機能をいう。以下この条において同じ。)を起動する指令を与える電気通信の送信をいう。以下この条において同じ。)を行おうとするときは、総務省令で定めるところにより、あらかじめ、当該情報送信指令通信が起動させる情報送信機能により送信されることとなる当該利用者に関する情報の内容、当該情報の送信先となる電気通信設備その他の総務省令で定める事項を当該利用者に通知し、又は当該利用者が容易に知り得る状態に置かなければならない。

(いやしかし何度見ても気が滅入りますよねこの条文…。)

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以上です。

次回は法務として苦手意識を持ちがちな、タグや情報収集モジュールについての技術面について書いていこうと思っています。

*1:イメージを持ってもらうために具体例を出しましたが他意はありません。以下の検討も、上記のプラットフォーム企業を前提としないものとお考えください。

*2:ここでは論点を絞るために、プラットフォーム企業・利用企業ともに、提供している役務自体は外部送信規律の対象になりうることを前提として考えます。その上で、外部送信規律の適用において、親(プラットフォーム企業のWebサイト)・子(利用企業のWebページ)関係をどのように捉えるべきかを考えます。